2014全日本選手権は、斉藤剛大(国士舘大学)の一人勝ちの様相で幕を閉じたが、2位となった臼井優華(中京大学)も個人総合3種目目までは、猛烈な食い下がりを見せていた。最終種目は、斉藤がロープ、臼井がクラブ。そこまでの3種目の合計得点での差はわずか0.025。しかし。先に4種目目・ロープの演技を斉藤がノーミスで終え、9.625というその時点での最高得点をたたきだしたあと、臼井は逆転優勝をかけたクラブの演技に挑んだ。斉藤と並ぶためには、9.650が必要となる。いくら臼井でも、9.650はかなり高いハードルだ。そのことを臼井が知っていたのかはわからないが、結果として、臼井はこのクラブで落下場外を犯してしまう。得点は、9.125。試合での落下場外は、ほぼ記憶にないというくらい、臼井としては珍しいミスが、重要な場面で出てしまった。この大きなミスで、ことによっては2位からも陥落? と思われたが、終わってみれば2位はしっかりキープしていた。クラブでのミスは大きかったが、それでも2位をキープできるほど、そこまでの貯金が大きかった。それだけ、今大会では、斉藤と臼井。この2人が抜けたトップ争いを繰り広げていたということだ。3日目の種目別決勝でも、出場した3種目は、すべて2位。「1つも勝てなかった」という悔しさはあっただろうが、ほとんどの種目が9.600近くか、超える得点だった。「すべて2位」とは言え、普通ならば優勝してもおかしくない高得点を今大会で連発した臼井が、来年以降、大学生をリードしていくことは間違いない。 ●個人総合2位:臼井優華(中京大学)3位に入ったのは、小川晃平(花園大学)だった。小川はまだ大学1年生。高校3年のときは、インターハイ、ユースなどを制しているだけに、全日本3位も驚きではない。しかし、今年の小川は、まるで「自分はまだ1年生なんで」と言わんばかりの演技になってしまったことが多かった。全日本インカレでも6位。1年生で6位は、決して悪くはない成績なのだが、高校時代から小川のポテンシャルの高さを感じていた人たちは、いささか拍子抜けしていた。「こんなもんだっけ?」といった声もなくはなかった。しかし。今大会での小川は、とりあえず4種目ノーミス。細かい狂いは見受けられたが、大きなミスなくまとめた。その結果、4種目とも9.450超えを果たし、終わってみれば初日の4位からひとつあげての3位となった。それでも。今大会の演技は、小川にとっては、まだ力を出し切ったとは言えなかったのではないかと思う。とくに構成を新しくした種目はまだこなれきれていない感はぬぐえなかった。いや、そう感じるのは、最後にあの鉄板のクラブを見てしまったからかもしれない。小川のクラブは、高校時代からやっている作品だが、高校時代からはまっていたし、今はなお、はまるようになった。身体能力が高く、スピード感も出せる選手ではあるが、彼のクラブを見てしまうと、「ゆっくり動いてなんぼ」と思ってしまう。クラブのような曲と振りだと、他を圧倒するような凄みを感じるような美しさが見えるのだ。まだ1年生。これからどんな風に変わっていくのか、楽しみにしておこう。 ●個人総合3位:小川晃平(花園大学)<撮影:清水綾子>
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