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Channel: 体操
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2014全日本選手権「至高の対決」~女子団体種目別決勝クラブ10

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数多くの名勝負、名演技を見せてくれた第67回全日本新体操選手権大会だが、3日目に行われた女子種目別決勝「クラブ10」での、上位3チームの戦いは、歴史に残ると言ってもいい名勝負だった。団体総合での「クラブ10」での得点上位8チームによる団体種目別決勝。まず、試技順2番で、団体総合を制した東京女子体育大学が登場した。今年は、東日本インカレで、日女、国士舘に後れをとるという、危機的状況からスタートした東女団体。しかし、その後の死力を尽くした立て直しで、全日本インカレでは65連覇を達成。そして、この全日本選手権の団体総合でもクラブ10は1位、リボン&ボールでは国士舘大学に首位こそは譲ったものの、2種目総合では堂々の優勝。団体女王の座を守り、いちだんと自信をつけた東女団体は、この種目別決勝のクラブ10でも迫力満点のノーミス演技を見せる。この日の東女の演技を見ていて、私には彼女たちが「戦士」に見えてきた。真っ赤なボディスーツに身を包んだ女戦士たち。彼女たちは、きっと「何か」を守るために命をも懸けて戦っている。物語なら、それは家族や愛する人を守るため、だろうが、現実的には「女王の座を守る」「東女のプライドを守る」ためかもしれないが。とにかく、この日の演技からは、そういう明確なイメージが伝わってきた。それほどに、東女の団体演技は、気迫に満ちていた。総合のときに出した16.450には及ばなかったが、優勝は十分にあり得る点数・16.350が出た。団体女王の東女が、この演技をすれば、種目別も優勝かな? 会場にはそんな空気が流れていたように思う。そして。東女のあとに、駒場学園高校、エンジェルRG・カガワ日中の2チームをはさみ、5番目に登場したのが国士舘大学だ。決まればとびきりの爽快感のある国士舘のクラブ10だが、じつは団体総合のときはミスを犯していた。最初の4本投げでもキャッチするのに移動があり、中盤では落下もあった。他のチームにもミスが多かったため、東女についで2位にはなったが、得点は15.450と東女には1点も離された。団体総合での演技は、おそらく国士舘にとっては悔いの残るものだったろう。「種目別では絶対にいい演技をする」・・・そんな意気込みは、フロアに入る前から選手たちにみなぎっていた。そして。彼女たちは、その意気込みを気負いにすることなく、きわめて冷静に演技を遂行した。曲のノリのいい部分では、弾けるようにステップを踏み、クラブを回し、笑顔がさく裂していたが、少々あぶない場面があっても、しっかり対処し大きなミスにはしない冷静さと、互いへの信頼関係が彼女たちにはあった。終わってみればノーミス。「この演技を見せてくれてありがとう」と言いたくなるほどの、すばらしいパフォーマンスだった。もしかして、これは東女を上回るかも。演技が終わった瞬間、そんな予感がした。そして、その予感は現実のものとなる。電光掲示板に表示された得点は、16.400。国士舘の応援席では、おそらく保護者だろう、「きゃー」と小さく歓喜の声を上げていた。国士舘が東女に勝った!この16.400という数字を見た瞬間から私は涙ぐんでいた。決して、東女よりも国士舘を応援しているとか、そういうことではない。全日本という最高の舞台で、こんなことが起きるということに感動したのだ。「大きなミスがなければどうせ東女の勝ち」とか、「国士舘がいい演技をしたとしても東女に勝つほどではないはず」とか。そんな先入観にとらわれず、目の前で行われた演技に対してしっかりとジャッジをした審判たちもすばらしかった。ほんの数年前まで低迷していた国士舘大学の女子団体が見せてくれた快挙の興奮が冷めず、続く日本女子体育大学の演技が始まっても、私はまだ涙をぬぐっていた。団体総合のときの日女のクラブ10は、中盤での落下もあり、やや集中力を欠いた演技で15.200の3位だった。ところが。この種目別決勝での演技は、なにか神がかったような凄さがあった。正直、私は演技前半、まだ国士舘の素晴らしい演技の余韻に浸っていて、日女の演技に気持ちが集中できていなかった。しかし、そんな状態の私を、彼女たちの演技が覚醒されてくれたのだ。えっ? こんなことってある?目の前で奇跡を見せられているような気がするほど、この日の日女の演技はそろっていた。それも、1つの作品の中で、動きの静と動が目まぐるしく入れ替わる。激しく、強く、すばやく動く。それも5人そろって。手具までもが揃って動く。そして、次の瞬間には、5人がぴたっとそろって止まる。動いても、そろう。止まってもそろう。そしてその5人の一体感が、力強さとなり、見るものの心をつかむ。もう目が離せなかった。何か「すごいもの」を見ている。演技を見ているその瞬間にそう確信できる演技だった。決して簡単な演技ではない。リスキーな部分も満載の演技なのだ。しかし、演技の途中で、「これはミスはしないだろう」と思えた。そのくらい、何か別次元の演技、だった。東女、国士舘に続き、日女もノーミスで演技を終えた。なんて凄い! なんて強い! 女子たちなんだろう。日女の得点がどうだとしても、3チームとも素晴らしかったし、3チームとも強かった。そのことは揺るぎない! と思った。日女の得点が電光掲示板に表示される。 16.700 今大会の団体での最高得点が、出た。結果、団体種目別決勝クラブ10は、日本女子体育大学、国士舘大学、東京女子体育大学の順になった。近年まれにみるハイレベルな戦いであり、大学生の団体のレベルアップを実感できた。それはおそらく、こうやって少しの出来の差で順位が入れ替わってしまうというスポーツなら当然起こり得ることが、今の女子新体操には、あるからだろうと思う。勝つこともあれば、負けることだってある。だからこそ、勝者は次も負けないように頑張るし、敗者もあきらめることなく次こそはと頑張れるのだ。現に、大会1日目の団体総合のときは、同じクラブ10の演技で、東女、国士舘、日女の順だったのだから。この3チームの力がこんなにも拮抗しているのは、おそらく初めてのことなのではないか。やっている当事者たちには大変な事態かもしれないが、観客にとってはなんとも贅沢な、そしてエキサイティングな展開になってきた。どのチームにも4年生がいる。チームの要だった彼女たちが抜け、新チームになると、この勢力図も変化はするかもしれないが、どこもそう簡単には脱落しないだろう。これは、来年以降も、女子団体の熾烈な戦いからは目が離せない。そして、その戦いが熱くなればなるほど、今回のように、すばらしい演技を見ることができるに違いない。女子の新体操に、女子の団体に、おおいに期待したいと思う。<撮影:赤坂直人>

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