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Channel: 体操
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2014インターハイに向けて~前橋工業高校(群馬県)

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正直に言うならば、このチームは「地味」だと思う。真面目なのか、おとなしいのか。練習を見ていても、いかにも体育会系! という感じの威勢のよさはあまり感じない。ただただ、黙々と練習している。そんな風に見えた。その印象を高橋監督に伝えると、「そうですか?」と心外そうに言われた。「だいぶ積極性は出てきたと思うんですが…」言われてみれば、たしかにそうかもしれない。3年前に初めて前橋工業の練習を見に行ったときは、もっとおとなしかったような記憶が蘇ってきた。前橋工業の卒業生で、中京大学出身の高橋監督が、母校・前橋工業の監督になって今年で3年目になる。地道に少しずつではあるが、チームは変わりつつある。地味でおとなしい印象のチームでありながら、動き始めると、独特の空気ができあがる。動きの美しさは、以前からあるが、今年はそこに力強さが加わり、不思議な世界観が見える演技になった。「ぼくも監督3年目なので、今年はすこし、自分の色を出していこうかと思って」と高橋監督は言う。現役時代から、「美しい動き、美しい演技」には定評のあった高橋監督。「去年までは、選手たちができることで作品を仕上げてきましたが、今年は、少し背伸びをして、やってみたいことに挑戦してみた、という感じです。」たしかに。去年も一昨年も、前橋工業の作品は、毎年高いレベルにはあるが、今年の作品はそれらとは一線を画している。少しおとなしい印象のある前橋工業の選手たちだが、それを補って余りあるくらい、高橋監督は熱い。怒鳴ったり、叱りとばしたりするような熱さではなく、自分の体が動いてしまう。彼は、そんな「熱さ」を持っている。すでに家庭を構えていて、一見すれば「いいお父さん」というキャラだが、自分の求める動きを選手に伝えようと、汗をかきながら動く高橋監督を見ていると、なんとまあ「新体操大好き小僧」なんだろう、と思う。前橋工業に赴任する前は、他校でソフトボール部の顧問をやっていたと聞いた。どんな部活の顧問でも、おそらく一生懸命務めてしまうような人だと思う。が、きっと。「いつかは新体操の指導ができるところに」と、強い思いを持ち続けていたのだろう。今年の前橋工業の作品からは、高橋監督のその強い思いが垣間見える。演じる選手たちも、あくまでも堅実。しかし、監督の思いを、彼らはしっかりと受け止め、形にしてきている。だから、彼らの演技には、心が動かされるのだと思う。前橋工業は、かつては新体操の強豪校だった。今でも決して弱い学校ではない。が、上位の一角をくずすのは、なかなか難しい、という位置づけにいる学校のように思う。だが、決して侮ってはいけない。ガッツリ決まれば、かなりいい。優勝にからむようなところまで今年いきなりいくのは難しいだろう、とは思う。ただ、このチームは確実に地力を上げてきている。美しい徒手と、力強いタンブリング。そして、表現も磨かれてきた。なによりも、見事な同調性は、彼らの地道な練習ぶりがしのばれて感動モノだ。いつの日か、「強豪・前橋工業」が復活するときが来るとしたら、今年の演技は、エポックメイキング的な作品として語り継がれるのではないだろうか。そんな予感がする。<撮影:椎名桂子>

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