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高校選抜大会直前企画~私的注目チーム①「網野高校」<上>

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高校選抜大会直前企画~私的注目チーム①「網野高校」<上>いよいよ高校選抜大会が明日から始まる。いや、すでに開会式や公式練習は始まっているから「直前企画」というにはギリギリすぎるかもしれない。が、なんとしても書いておかねば!と思うチームが、今大会、私には2チームある。ここ数年、男子団体は常に井原高校が本命視されてきた。毎年、「井原の優勝」または「どのチームなら井原を倒せるか?」そんな様相を呈していた。ところが、今大会の団体に「井原高校」の名前はない。あの井原が、今回は、団体を組めるだけの人数がいないのだという。それは残念なことには間違いないが、その分、優勝争いは混沌としてきた。どこのチームにもチャンスがある、という気になってくる。選抜大会の試技順は、昨年のインターハイやブロック大会での成績が反映するらしく、あからさまに有力校(とおぼしきチーム)が後半にかたまっている。熱心なファンならもちろん、競技開始から見るだろうが、「ちょっとだけ見てみようか」という程度の観客なら、後半だけ見にくるということもありそうだ。が、しかし。選抜大会の見所は、なにも有力校がひしめく後半だけではない!と私は思う。開催地以外は、1県1校しか出場できないインターハイと違って、選抜は、同一県から複数校出場ができる。競技人口の少ない男子新体操とはいえ、「この2校が同じ県にあるのはもったいない」と思うような2校がしのぎを削っている県がいくつかある。昨年でいえば、もっとも厳しい戦いだったのは、京都府ではないかと思う。昨年のインターハイに京都代表として出場した紫野高校は、同校の団体としては初のジャパン進出を成し遂げた。体操経験者が多く、力強いタンブリングを武器にした紫野団体は、たしかに強かった。その紫野高校にわずかに及ばず、インターハイ出場を逃したのが、網野高校だ。網野高校も、かつてはインターハイにも何回も出場していた強豪校ではあるが、近年は、2010年沖縄インターハイを最後に団体出場を逃し続けている。しかし。昨年のチームは、網野高校としても久々に強いチームだった、と聞いていた。実際、私は、Youtubeで彼らがなにかのイベントで屋外で行った演技を見たが、劣悪な環境にもかかわらず彼らの演技は、十分に魅力的だった。「これでインターハイに出れなかったとは・・・」と残念に思った。それだけ、2013年の京都の戦いは、熱く厳しかったのだ。その網野高校が、久々に選抜大会への出場を決めたと聞いて、1月末、網野高校を訪ねてみることにした。京都とは言っても、日本海側。はっきり言ってかなり遠く、かなり辺鄙な場所だ。だが、行ってよかった! と思える旅だった。この日、私は、彼らの放課後の練習をはじめから見ることができたのだが、彼らの練習はまず「鬼ごっこ」から始まった。もちろん、ただの鬼ごっこではなく、逃げながらも前転をしたり、十分ウォーミングアップになる運動なのだが、なにしろ楽しそうだ。「あ~、今から練習かあ」というような憂鬱さや重苦しさはかけらもない。彼らは、この体育館で過ごす放課後がきっと大好きなんだろう。最初の数十分で、そのことはよくわかった。鬼ごっこのあとは、鏡を見ながらのアイソレーションや基本徒手。やるときはやる! マットの上を駆け回ってはしゃいでいたときとは別人のようにまじめに彼らは練習に取り組んでいた。網野は、どう見ても人口の多そうな町ではなかった。となれば当然、男子新体操をやる生徒を集めるのも大変だろう、と思っていたが、練習風景はちょっと意外なほど賑やかだった。3年生は引退している時期だというのに、10名以上の部員が練習しているのだ。ジュニアからずっと新体操をやってきた、という子はいない。体操をやっていた、という子がいるくらいだ。しかし、彼らのタンブリング練習を見て、軽い衝撃をうけた。うまい! のだ。もちろん、個人差はあるが、とても高校から始めたとは思えないスピード、強さのあるタンブリングをする子がいる。高さのある子もいる。網野高校、なかなか侮れない。この時点で、私は改めてそう思った。彼らは、自分の意思で新体操を始めた。そして、続けてきた。だから、楽しいんだろうなあ、と思う。はじめはなにもできなかったはずだ。でも、だからこそ、毎日少しずつでもできることが増えるのが楽しくてたまらなかったのだろう。この部のこの楽しそうな空気は、顧問の小倉宏充のキャラクターに負う部分も大きいのだろう。国士舘大学出身の小倉は、もちろん、チームを強くしたいとも思っている。厳しい指導をすることだってある。だが、「勝利至上主義」には見えない。「なによりも新体操第一であるべき」と思っているように見えない。あくまでもいい意味で、だ。顧問も含め、彼らは、「今」を楽しく生きるひとつの要素として、新体操を選んでいるように見えた。ただし、「楽しい=楽する」ではない。「楽しいからこそ、真剣に取り組む」そんな風に見えた。分習では、どこまでがレギュラーなのかわからないくらい真剣に、サブメンバーも動いていた。大会のフロアで踊る6人以外の選手たちも含めて、彼らは1つのチームなのだ。そして、練習も終わりに近づいてきたとき、通しを見せてもらえることになった。    <つづく>

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