2013全日本ジュニアレポート④ 赤星光希(水俣第一中学校)九州勢のジュニアでもう1人。手具落下のあった種目も多かったが、赤星光希も、その動きの思い切りのよさで目を引く選手だった。おそらく、それほどキャリアが長くはないのだろう。それは手具の落としっぷりや、演技の粗さなどからもわかる。それでも、今風のダンス的な振りなどはまったく入っていないシンプルな演技を、力強く、気持ちよく演じていることに好感がもてた。彼の所属は「水俣第一中学校」。男子新体操の古豪・水俣高校のお膝元だ。指導しているのは、昨年の社会人大会、ジャパンのエキシビションでの演技が、誰の記憶にも新しいだろう杉迫一樹だ。杉迫は、現在、外部コーチとして、水俣一中の男子新体操部を指導している。が、部員は、赤星ひとりだけだという。2年前、水俣一中には、県内でも「いい」と評判になっていた選手がいたのだそうだ。水俣一中から外部コーチの依頼がきたとき、杉迫も「あの選手を育てられるならやりがいがありそう」と引き受けることにした。ところが、2012年春に、杉迫がコーチして体育館に赴くと、そこにいたのはその「期待の選手」ではなく、当時、144センチ、53キロという体格の1年坊主ひとりだけ。それが赤星だった。「有望」と言われていた選手は、家の引っ越しで転校していて、たった一人の部員には、あまり期待できそうもない。それでも、杉迫は、「とにかくこの子の能力でやれるところまでは伸ばしたい」と思ったという。シニカルで口の悪い杉迫なので、「この子のために」とは言わない。正直、そう思って教えてきたわけではないだろうと思う。なにしろ、車いすを駆使して団体演技をやってのけた男だ。おそらく、反骨精神。無理そうなことにほど燃える。そんな感じだったのではないか。小4から、地元の水俣ジュニアで新体操をやってはいたが、なにしろぽっちゃりさんで、特別うまいわけではなかった、という赤星だが、中1の5月からコーチに来るようになった杉迫から、かなり厳しい指導を受けるようになった。「新体操以前に、挨拶をちゃんとしろ、とか。そこから教えました。」「かっこいい動きとか、ダンスみたいな動きは、絶対やらせない。最初からそれを覚えると伸びないと思うから。とにかく基本をしっかり、きちんと体操を教え込んできた。」と、杉迫はかなり厳しいコーチのようだが、それでも、この師弟の間には兄弟のような親子のような強い結びつきが感じられる。「杉迫さんに教えてもらうようになって、手具もやるようになって、新体操がすごく面白くなってきた。」と赤星は言う。面白いから、厳しい指導にも耐えられた。夢中で新体操に取り組んでいたら、現在は156.8センチ、48.6キロになった。この1年半で、身長はプラス13センチ、体重はマイナス4.6キロ。体型も顔も、まったくの別人だ。新体操ももちろんうまくなった。杉迫が教え始めたころは、試合に出れば4点台だった。それが、6点台、7点台と点数を伸ばしてきて、全日本ジュニアではついに落下のなかったロープでは、8点台にものった。まさに、伸び盛り! だ。「全日本ジュニアは、会場はでかいし、投げは見えないし、緊張しまくりました。」演技同様、元気いっぱいに赤星は、今大会の感想を語ってくれた。「来年もまた出たい! そして、来年はどの種目も8点超えしたいです。」大きな舞台を経験したことによって、明確な目標も見えてきたのだろう。彼の目は、文字とおり、キラキラ輝いていた。「今回は、選手にとっても自分にとっても経験だから。今回、感じたことをこれからの練習に生かして、来年ここに戻ってきたい。じつは来る前は、今年はデビューで来年は上位を目指そうなんて思ってましたが、ジュニアのレベルがすごく高くなっていることがわかったので、それは甘い考えだったとわかりました。だから、来年は上位に、とまでは欲張りませんが、成長した姿を見せられるようには、こいつと頑張ります。」杉迫の言葉に、赤星は、「おう」というようにうなずいた。この2人、「師弟」というよりは「同士」のようだ。来年もまた、全日本ジュニアで見たい選手がまた1人増えた。 <撮影:清水綾子>※ジムラブのギャラリーに、「日本女子体育大学発表会」の写真をアップしています。
http://gymlove.net/rgl/topics/gallery/2013/11/07/post-56/※ジムラブのギャラリーに、「2013東京国体」の少年男子群馬チーム、少年女子神奈川チームをアップしました。
http://gymlove.net/gl/topics/gallery/2013/11/07/2013team-3/
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