2013全日本ジュニアレポート③ 森園颯大(鹿実RG)
10月18~20日に代々木第一体育館で行われた全日本ジュニアは、いわゆる「ジュニアらしい」試合だった。もちろん、上位選手の中には、「ジュニアらしからぬ」完成度の演技を見せた選手もいたが、ハッとさせるよいものをもっているのだが、まだ完成しきれていない、つまり「のびしろ十分」と感じさせる選手が多かったのだ。そんな「この先が楽しみ」な選手たちを少しずつ紹介していきたいと思っているが、まずは私の故郷であり、男子新体操の強豪地区・九州勢から始めようと思う。なんと言っても、インパクトがあったのは、森園颯大(鹿実RG)だ。九州小学生大会のチャンピオン! そう。つまりまだ小学生ながら、九州代表として全日本ジュニアに駒を進めてきた選手だ。身長を見れば、たしかに「小学生そのもの」だが、ひとたび演技を始めると、この小さな体が、「そこまで?」と驚くほど大きく深く動く。そして、小学生にしてすでに、抜群の表現力をもっているのだ。「九州にスゴイ小学生がいる」とは聞いていたが、たしかに。そして、彼を引率してきた監督を見て、また驚いた。奥 雄太だったのだ。
2011年に社会人選手としてジャパンに出場して以来、あまり消息を聞くことがなかった奥は、故郷である鹿児島で、ダンスや体操のインストラクターを務めながら、森園ら鹿実RGのジュニア達に新体操の指導をしているのだという。鹿実での練習は、週3日(木・土・日)。家が鹿児島市内ではない森園は、練習日以外は、自宅近くの学校で中学生の兄と2人で練習をしているそうだ。森園と奥の出会いは、奥が最後に社会人大会に出た2011年だった。その年、奥は社会人大会の練習のため、鹿児島実業高校はもちろん、スプリングマットのある薩摩川内市内のタートルスポーツなどにも練習しに行っていた。当時、タートルスポーツで新体操をやっていた森園は、そのときの奥の練習を見て、「かっこいい!」とほれこんでしまったのだ。その後、保護者から奥に連絡があり、タートルでの練習のほかに奥が森園を教えることになった。「先生に見てもらえる日に、課題をもらって、次に見てもらうまでにできるように、兄といっしょに練習しています。」という森園。今大会では、落下などのミスもあり、得点を伸ばすことはできなかったが、「投げとか基本的なことをミスしないようにもっと練習して、自分の持ち味である表現力を見せる演技がしたい。」と語り、「(いつかは)優勝したい!」という頼もしい言葉も聞けた。奥は、森園のことを「初めて見たときに、直観的に自分に似ている感じがした。」と言う。そして、いざ教えるようになってみると、とにかく努力家なことに驚いた。つらい柔軟も、さぼらず、ごまかさずやる。その努力が、小さな体ながら、動けば大きく見せることができる現在の森園の可動域の大きさにつながっている。奥も、表現力には定評のある選手だった。その奥のDNAを十分感じさせる演技をするこの「森園颯大」という選手を、奥は、どんな選手に育てたいと思っているのだろう。「勝ちたい、勝ちたいばかりでなく、見ている人に感動を与えられる演技のできる選手になってほしい。」それが奥の答えだった。だから。「今は点数を気にして演技させたくない。点数よりも、自分の良さを100%出させたい。とにかく全力で演技すれば、頑張っている姿に人は感動するものだと思うから。」と奥は言った。もっとも今大会では、ミスが出てしまい、「100%」というわけにはいかなかった、と苦笑いしながら、ではあったが。「今回は、全国デビュー戦だったから、まず、名前を覚えてもらえればいいか、と。まだまだ、弱さがあり、課題がたくさん見つかった大会だったのでよかったです。」来春には、中学生になる。来年の全日本ジュニアでは、おそらく上位を脅かす存在になってくるのではないか。この先、どんな風に育っていくのか。ぜひ注目しておきたい選手だ。 <撮影:清水綾子>※ジムラブに、「全日本体操団体選手権女子優勝:朝日生命」をアップしました。
http://gymlove.net/gl/topics/report/2013/11/03/67-22/※ジムラブに、「全日本体操団体選手権男子準優勝:日本体育大学」をアップしました。
http://gymlove.net/gl/topics/report/2013/11/04/67-23/※ジムラブに、「全日本体操団体選手権:女子決勝」がアップされています。
http://gymlove.net/gl/topics/report/2013/11/05/67-24/
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