今年の全日本インカレ、男子団体は近年稀に見るハイレベルな戦いとなった。そんな死闘を制したのは、青森大学で、昨年のジャパンで花園大学に譲った王座を奪還!
13連覇を達成した。中田吉光が監督に復帰し、かつての常勝軍団としての誇りと団結を取り戻した青森大学は、公式練習のときからはっきりと「王者の貫禄」を纏っていた。本来なら、この大会は、昨年ジャパンに続いて花園大学が青森大学を破り、連覇をストップするか?ということに最大の関心が集まるはずだった。1日目の予選試技順2番だった花園大学の演技も、倒立でやや乱れはあったものの、「さすが昨年の全日本王者」と思わせるだけのハイレベルなものだった。しかし、公式練習を見ていた人の多くは、「それでも青大が勝つだろう」と感じていたのではないか、と思う。それほどまでに、今回の青森大学は、「勝つ空気」をもっていた。それも、昨年まではどこか違う。より真摯でひたむきに「勝ち」を求める空気だった。「勝ち続けているときにはどうしても失ってしまうもの」を、今年の青森大学は取り戻していた。予選、決勝ともに、ノーミスの完璧な演技。それも、まさに「命がけ」と言ってもいい、ハイリスクな組み技、飛ばし技をラストに組み込むという、ある意味、「なりふり構わぬ」攻めの演技は、ここ数年の青森大学にはなかったものだ。青森大学の持ち味であり、強みである移動の大きさ、流れのよさ。そして、徒手の美しさ。それらももちろん健在だった。しかし、強いて言うならば、近年の青森大学の特徴であった「重厚感」。そこだけは、やや薄らいだようにも思う。それは、青森大学にしては、やや小柄だったり、スリムな選手が多かったゆえんだろう。だが、そういった選手を起用した理由は、演技を見れば、一目瞭然だった。青森大学は、「重厚感」を犠牲にしてでも、この作品で勝負したかったのだ。昨年のジャパンでは黒星がついたものの、インカレでは、まだ12連勝中だった。それでも。今年の青森大学は、はっきりと「挑戦者」であり、必死だった。たしかに構成もすばらしかった。選手たちの実施のクオリティも高かった。だが、王者でい続けるにふさわしい演技だった、と人が思うのは、そこに「誰にも負けない懸命さ」を感じたときなのだ。勝ち続けているときには、それを持つことは難しい。しかし、今年の青森大学の演技からは、それが痛いくらいに伝わってきた。「王者にふさわしい」そう誰もが認める演技だった、と思う。決勝の日。会場を埋め尽くした観客の歓声は、青森大学の演技終盤の「ダブルブランコ」では、地鳴りのようだった。あそこまで大きなどよめきは、ここ数年の男子新体操ではなかったように思う。美しい演技に、しんと静まり返るのとは違う。本当に「すごいものを見た」というときのうめき声にも似た歓声。それが、栃木県南体育館に渦巻いたのだ。昨年のジャパンで、青森大学の敗北を決定的にしたのは、演技終盤での「ブランコ」の失敗だった。選手にとっても、中田監督にとってもトラウマになりかねないこの技を、よりアグレッシブに進化させることで、彼らは、昨年の自分たち、今までの自分たちを軽々と超えて見せた。その「強さ」と「意地」には、脱帽するしかない。会場にいた人はもちろん、この演技を見た人はきっとみんなそう思うだろう。●2014全日本インカレ団体決勝 青森大学動画
↧