「新しい道」(佐々木智生)4月になってもう3週間がたとうとしている。多くの人が、新しい環境で過ごすことになる4月は、1年の中でも特別な月だ。新体操の選手たちでいえば、ジュニアから高校に、高校から大学、または社会人に。そして、大学を卒業して、新しい世界へ。そんな変化を迎えて、今までとは違う顔を見せてくれることは、少しさびしさもあるが、楽しみでもある。先日、訪ねた光明学園相模原高校でも、そんな「新しい顔」にいくつか出会った。新しく高校に入学してきた選手たち。そして、彼だ。私の中で、今年の光明への期待は大きい。3年生の一戸佑真と山口聖士郎。この2人は、ジュニア時代から非常に美しい新体操をする選手だった。今年もそうだが、神奈川県から1人しかインターハイに出場できないことが残念でたまらない。そう思わせる2人だ。さらに、今年2年生になった竹内陸。この選手もとてもいい。昨年からよかったが、先日見たところ、ぐっとたくましさも増し、そして動きがやわらかく、情感の伝わる動きをしていた。この3人だけでも、団体6人のうち3人は間違いなくいいのだから。さらにほかの選手たちも、こと動きに関しては決して悪くない。一戸、山口、竹内がいいのはもちろんだが、ほかの3人ががくんと落ちて見えるかといえば決してそんないことはないのだ。おまけに今年は、ジュニアで新体操をやってきた選手が入ってきた。全日本ジュニアを経験している選手もいる。期待するなというほうが無理だ。あとは、どこまでチームを、作品を仕上げていくか。そして、「もっと上に」という熱をもたせられるかどうか。そこにかかっていると思う。大化けする可能性は十分にあるチームなのだから。私が光明に行った日、そこには、若くて熱くて、背の高いコーチがいた。選手の休憩時間には、近々ある演技会でやる自分の演技を確認して動いては、選手たちの目を釘付けにするコーチがいた。この春、国士舘大学を卒業したばかりの佐々木智生だった。彼は、母校である光明相模原高校のコーチになった。今年度から週5日は指導にきているという。顧問の貝瀬も、「智生が見てくれるので、今年はかなり練習できています」と、頼もしそうに言う。たしかに、後輩たちを指導する佐々木は、頼もしかった。こう言っては失礼かもしれないが、国士舘の4年生だったころよりも、ずっと頼もしかった。学生時代の佐々木は、恵まれた体と能力をもちながら、どこか自信や勝ち気の希薄な選手だった。そこが彼の良さでもあったが、もったいない部分でもあった。その佐々木が、指導の場に立つと、驚くほど「強い」。怒鳴ったりするわけではない。口調がきついわけでもない。だが、「強い意思」をもった指導をしていた。そして、選手時代には見たことのないような「勝ち気」を見せていた。「自分が選手だったときは、勝つことよりも、自分がやりきったと思えるかどうかが大事だと思うほうでしたが・・・」と佐々木は言う。たしかに彼はそんな選手だった。「教える側になってみると、勝たせたい! って思いますね。だって、力はある子たちなんで、勝たせたいです。」大学を卒業して、教える立場になって、初めて彼は、「勝ち気」になった。それもまた佐々木智生らしい、と思う。戦力も充実してきたところに、この上ないコーチも得て。今年の光明相模原は、どんな演技を見せてくれるのか。どんな成長を見せてくれるのか。楽しみでたまらない。
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