2013私的MIP新年あけましておめでとうございます。
2013年も新体操に明け、新体操に暮れました。昨年の6月以降は、本当に、生活のほとんどを新体操が占めている状態でした。このエネルギーをもっと違う方向に向ければ、我が家の経済状態なり、栄養状態なり、部屋の状態は、どんなにか改善されるだろう、と思いつつも、意地や使命感、そしてなによりも「好きだから」。とひたすらやってきました。このブログにしても、「ジムラブ」にしても、基本、ボランティアですから、正直、これだけ浸かっていると、ときには無力感に襲われたり、「なんで?」と思うこともあります。でも、そんな思いを吹き飛ばしてくれる演技に、出会えることがあるから、やはり、新体操を追いかけ続けているんだと思います。
2013年でいえば、名作、名演技は数あれど、いちばん私の印象に残っていて、いちばん私に勇気をくれたのは、全日本社会人大会、そして全日本選手権での「Re:make」の演技でした。全日本社会人大会での彼らの演技については、すでに詳しく書いているので、こちら(↓)を参照してもらうとして、2013年11月23日に彼らが見せてくれたミラクルについては、まだ書いていませんでした。じつは、2013年の総括として、12月31日に彼らの記事を書こうと思っていたのですが、かなわず、年も明けてしまいましたが、書いておきたいと思います。●全日本社会人大会の「Re:make」の記事
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/rg-lovers/daily/20131031公式練習のときから、彼らのチームは独特な空気を漂わせていた。とてつもなく真剣で、必死でありながら、どこか楽しそうなのだ。おそらく多くの不安も抱えているだろうに、「やったるぜ!」という意気込みもひしひしと伝わってくる。そして。彼らのサポートについている面々を見て驚いた。花園大学OBで西日本インカレでの優勝経験もある野口勝弘、現在シルク・ドゥ・ソレイユで活躍中の谷本竜也(花園大学OB)、野呂昴大(光明相模原高校OB)というそうそうたるメンバーだったのだ。さらには、ついさっきまで個人選手として全日本に出場していた内田秀晴も、臨時監督としてついていた。もともと、Re:makeは、固定した練習場所もなければ、それぞれが別の仕事をしており、勤務地も生活パターンも違う。そんな中で、とにかく新体操が好き! やりたい! の一念だけで、やってきているチームだ。それを知っている新体操人なら、きっと誰もが応援したくなるチームと言っていいだろう。そのうえ、今年は、社会人大会で、チームリーダーの大原朗生が、右膝前十字靭帯断裂という大けがをしてしまうという大ピンチに直面していた。かれらの窮地を知って、「なにか力になれないか」、そう思う仲間は多かったのだろう。大ピンチに見舞われていることには変わりない。全日本の1週間前に彼らの最後の練習を見に行ったとき、大原も、そして大原の片腕である宮川健太郎も、「ジャパンで、ちゃんと演技が形になるかが心配」だと言っていた。大原の右膝は、「運動できるようにするためには手術が必要」という状態だった。「タンブリングできない」自分は考えられない、と大原は即座に手術を決断した。が、すぐに手術してしまうと、さすがに1か月後の全日本のフロアに立つことが不可能になる。手術はする、だが、それは全日本が終わってからだ。その決断に、迷いはなかった。いや、本当は迷っていたのかもしれない。十分に動けない自分がチームにいることが、果たしてプラスなのかどうか。どんなにみんながいいパフォーマンスをしても、自分の存在が、得点面ではきっと足を引っ張る、チームリーダーだからこそ、そうなっていいのか? という思いはあっただろう。しかし、その迷いは、仲間たちによってあっさり払拭された。大原抜きで全日本に出るという選択は誰の頭にもなかった。そうするくらいなら、チームごと出ない。彼らはそう決めていた。もとはと言えば、寄せ集めのチームだ。花園大学出身が宮川と同免木亮介、久納直也の3人といちばん多いが、あとは大原が国士舘大学卒業、田邊浩仁は、会津工業高校出身、高柳隆盛は、光明相模原高校出身で、現在大学生。「●●大学出身じゃなければ」なんてこだわりは彼らの中にはない。「新体操が好き!」それだけで十分。それだけの結びつきで、こんなにも深く、強く、彼らは「チーム」だった。そして、そんなチームだから、みんなが応援した。全日本選手権2日目。団体の試技順16番で、彼らのチーム名がコールされると、あの代々木第一体育館のあちこちから、声援が飛んだ。所属とは関係のないその声援は、学校ぐるみのそれとは違って、ややばらついていたし、整然としたものではなかった。ただ、それだけに温かく、熱く、会場全体が彼らを応援し、見守っている空気になった。あのときの、あの体育館の雰囲気は、ほかのチームではあり得ない。彼らだから。
Re:makeだったから。得られたもの、だった。その声援にも力をもらったのだろう。1週間前に練習で見たときとは見違えるような演技を彼らは見せた。とくに右膝をサポーターでぐるぐる巻きにして出場を敢行している大原。1週間前に見たときは、さすがに膝をまっすぐ伸ばすことが難しく、その影響はあちこちに見えていた。膝がまっすぐ伸びなければ、上挙ひとつ、胸後反ひとつ、美しく行うことはできないのだ。ベテランで、いつもならあれほどキレのよい動きを見せる大原といえど、そこは無理からぬことだった。だが、膝の状態を思えば、演技できているだけでも十分だ。それ以上を求めるのは酷だ、と思っていた。ところが、この日の大原は、伸びないはずの膝が伸びていた。1週間前とはまったく別人のように。なんて精神力。なんて回復力。さすがにタンブリングだけは、抑えに抑えていたが、あやうくスリーバックやってしまうんじゃないか? と思うほどに、まるで怪我したなんて嘘のように、彼はフロアで躍動していた。同免木も、じつは社会人大会のときから、肉離れに苦しんでいたそうだが、彼もまた、大原の頑張りを目の当たりにして、まるで「自分のはたいしたことない」と言わんばかりに、なんのビハインドも感じさせない演技をやり切った。社会人大会から全日本選手権の間の1か月。もともと練習回数は多くないうえに、怪我人もいて、満足に練習はできていなかったはずだ。それでも、この日、全日本での彼らの演技は、すばらしかった。このうえない一体感があった。演技が終わって退場するとき、大原は感極まって泣いていたように見えた。人前で泣いたりは絶対にしたくないはずだが、きっとこらえきれなかったのだろう。その涙は、この舞台で自分が全力での演技をできなかった悔しさから、でもあっただろうが、おそらくそれよりも、もっと温かい思いからの涙ではなかっただろうか。最高の演技はできなかったかもしれない。でも、まぎれもなく、彼らがあの日見せた演技は、「最高に心に残る演技」だった。社会人でも、寄せ集めチームでも。練習場所や時間が満足になくても。こんなにやれる! ここまでやれる!と彼らは示してくれた。「Re:makeみたいに」と、続くチームや選手が出てきてくれるんじゃないか。私はそんな期待をしている。男子だけではなく、女子でも。
2014年は、「社会人元年」になればいいと、私は心から願っている。願っているだけではなく、なにかやれることがあれば、今年こそは精力的にやってみたいと思っている。社会人にはまだまだ可能性がある。その可能性を、彼らが、Re:;makeが、まさに体を張って、見せてくれた。 <撮影:清水綾子>
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