今年《光明相模原》は、くる。昨年度後半あたりからじわじわとチームの総合力が上がってきているな、と感じてはいた。今年2月初旬に八王子で行われたYUI colors新体操クラブの発表会で見た団体は、卒業を控えた3年生中心のメンバーで、体育館の床の上というハンデもあったもののひとつひとつ丁寧な動きと団体ならではの一体感を見せ、会場中から大きな歓声が沸き起こった。小学生の女子が中心の発表会でおそらく生の男子新体操をみるのは初めてという人も多いようだったが、なかなか鳴りやまない拍手が続き、見る人の心を打つ素晴らしい賛助演技となった。実はその時帯同していた佐々木智生コーチ(光明相模原高校、国士館大学卒業)に、高校選抜前に一度練習取材に伺いたい、と伝えると、「いや、できれば選抜より来年度、見に来てやってください。来年度に照準合わせてますから。」という言葉が返ってきた。愛媛で行われた高校選抜では10位。昨年夏の高校総体も9位。どちらも目立つ戦歴ではない。が、佐々木の言葉通り、新年度となった最初の全国大会、5月のササキカップ男子団体選手権で見事3位で表彰台へ登り、平成24年以来5年ぶりに全日本選手権への出場権を早々に獲得することができた。続く6月の高体連関東大会でも団体優勝と快進撃を見せる。この勢いそのままに、夏の高校総体へ向けてさぞ気合の入った日々を過ごしているだろう光明学園相模原高校を訪ねてみた。この日は定期考査前ということもあり早朝から短い時間の練習とのことだったが、訪れてみるとかなりの人数がいた。卒業生でジュニアチームの指導者として活躍している大原朗生が夏のジュニア大会へ向けて選手を連れて来ていた。他にもここで行われている週1回相模原市が開催する体操教室の生徒のうち、もっと男子新体操がやってみたい、という意欲的な何人かが参加していたため活気あふれる賑やかな練習風景がそこにあった。光明相模原は、伝統校であると同時に、卒業生が長く新体操にかかわり続けていることでも全国屈指だ。新体操での大学進学もそうで、現在の大学生でも花園大学で個人で活躍する竹内陸や団体の上野颯太郎、国士館大学には4年に岩井拓将、大竹敦、3年に一戸佑真、山口聖士郎、1年に池谷海都と5人が在籍している。その国士館の山田小太郎監督も卒業生の一人だ。また、毎年社会人大会へのエントリーも必ずと言っていいくらい出身者がいるし、すでに今年の大会もエントリーを表明している卒業生もいる。一昨年社会人大会団体で全日本出場を果たした踊心のメンバーもこの場所を借りて練習を重ねるなどし、その後高校の団体構成作りに協力するなど出身高校や大学の枠を超えて相互に協力体制をとってきた経緯がある。過去何回か訪れたことがあるのだが、卒業生がやって来ては一緒に身体を動かしたり後輩の練習を見ている、そんな姿が必ずあった。このときも卒業生の中島廉太郎が大原率いるジュニアクラブのコーチとして一緒にきていて、聞けば先輩にあたる宮川健太郎のチームから今年の全日本社会人大会に出場するという。他にも今年の春卒業したばかりの西山拓海、宇田村竜彦も一緒に出場を予定している。あの2月のYUI colors発表会での団体演技を披露した中の2人だ。中島は高校生と交互にフロアに上がって踊ったり一緒にジュニアの指導をしたりと忙しい。年上が年下の面倒を見る。年下の子達はお兄さんたちの動きを見逃すまいと一生懸命に見つめる。そして卒業しても自然に関わりあう雰囲気が生まれる。ここではこういう光景は当たり前なのだ。また、市の体操教室は、今年は50人もの参加者がいるため、高校生も手伝って指導に当たるという。『面白いですよ。教え方もそれぞれ一生懸命考えて。言葉で説明するのがうまい子もいれば、ともかく動いて見せる子もいて。初心者が多いから教えるのも工夫が必要なんです。いい勉強になると思います。』そう語る貝瀬監督に、今年の快進撃について話を伺った。今年のチームのこの強さの要因は、と尋ねると即答だった。『自主性です。』『ともかくよく動き、自分たちでよく考えて行動する子たちなんです。』団体のメンバーは主軸の3年生を中心に、大阪のREX SPORTS CLUBから入部した1年生2人で構成されている。『1年生の2人が練習熱心。まじめで前向きでぐんぐん伸びてきている。上級生が押し上げられる感じで全体に加速してうまくなる。相乗効果が生まれているんです。選手たちの頑張りのおかげです。』しかし。関東大会での優勝に話が及ぶと、苦笑いに変わった。調べてみると、光明相模原が関東で優勝したのは平成14年にまでさかのぼる。平成10年から14年にかけては5連覇を達成している。そのとき以来の快挙だ。が、実際のところ、今年の関東大会では失敗があった。『前橋工業が3連覇をかけていい状態で挑んでくることは予想していたんです。試技順が続いていたので演技を観ることができませんでしたが、前工の演技に会場中が沸いて盛り上がっているのはフロアの脇で選手の耳にも聞こえていて。』でも、自分たちはすでに全日本出場も決めている。ここで負けるわけにはいかない。そういった気負いがあったのかと尋ねてみた。『まさにそうだったのかもしれません。』ミスが出た。『負けた、と思ったんです。完全に。』全員顔をあげなかったし声もなかった。が、前橋工業にも同様にミスがあり、結果僅差で15年ぶりに光明相模原が関東大会優勝を成し遂げた。『でも、だれも喜ばなくて。本当に悔しい悔しい優勝でした。』『だけど、最大の目標である夏の総体前にそういう経験ができたことはよかったと思うんです。』団体キャプテンの高橋晴貴(3年)にも話を聞いた。『自分はずっとJAPANへ出ることが夢で、叶えられたことで関東大会では浮かれていた部分はある思います。』『去年の関東大会では自分のミスで負けて。だから今年のミスしたやつの気持ちもわかる。だからこそ全員で高校総体では挽回したいです。JAPAN出場の名に恥じないよう、上位を狙っていきたいです。』『チームは個性が強すぎて。一人ひとりいろんな意見を持っているのでなかなかまとめるのが大変です。でも前向きなやつばかりなので全体にいい雰囲気だと思います。』『自分たちの1つ上の学年は名のある選手が全国的に多く注目されることが多かった。が、俺たちの学年も、すごいな!!と言われるような存在感を示す選手になりたいです。』3年かけて成し遂げてきたことへの自信、そして高校総体への意欲に満ちた言葉を聞くことができた。個人で高校総体県代表になっている井門輝(3年)にも話を聞いた。ユースで7位と健闘、こちらも既に全日本初出場が決まっている。『ずっとジュニアのころから対戦してきた吉田和真(青森山田)や田中啓介(埼玉栄)、ジュニアクラブで一緒だった向山蒼斗(国士館)には負けたくないです。少しでも近づいて勝ちたい。』『自分は柔らかい、やさしい表現とかは苦手なんですけど、アクティブに攻めるような素早い動きや、タンブリングのキレや着地の抑え、基本的な徒手の動作は注目してみてもらえたらな、と思います。』『自分は団体、好きなんです。今年が一番手応えが感じられて、もの凄く楽しいです。高校総体でも、もちろん上を狙っていきます。』もう一度、言っておく。今年の光明は侮れない。~~~光明相模原高校・インターハイ前演技披露会~~~8月5日(土)13時より 於:光明学園相模原高校※どなたでも入場できます。ぜひ足をお運びください!
PHOTO & REPORT:Ayako SHIMIZU Edited by Keiko SHIINA
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