‘17/5/31「地方開催か、中央開催か…?」でも関連したことを書きましたが、スポーツが地域活性化に相応以上の効果がある可能性を秘める点については、異論を唱える方はさほど多くないのかと思います。先週末、体操競技の全日本種目別選手権が群馬県の高崎アリーナで開催されました。近年は体操の主要大会の多くが東京の代々木第一体育館で開催。他会場でも開かれますが、多くが東京か南関東。4月にオープンした高崎アリーナでは初めてということで、6/25の最終日は当日券販売なしのいわゆるSold Outイベントになりました。曲りなりにもスポーツビジネスを主眼とする当ブログの「スタジアム&アリーナ」カテゴリーでこれまで取り上げた施設と比べると、若干見劣りするかもしません。が、上記の記事やオープン直後というタイムリーさも考え、今回は高崎アリーナについて書くことにしました。地元活性化のツールとして位置付けられることが多いことや、日本のスポーツを支えてきた地方のスポーツ施設の最新の例を取り上げるのは意味があると思いましたので。ということで、今回も長所と短所を3つずつ挙げたいと思います。まず良い点。1.エントランス(ロビー)部分の広さと汎用性後述の、施設内の導線(or 動線)や通路幅などが犠牲になった印象も受けますが、中規模施設であるバランスを考えると、ここで一番印象的なのはロビー(エントランス)部分の広さです。同規模のアリーナや体育館にも相当数行っていますが、ここまで広々として開放感がある場所は私は国内では初めてです。今大会はグッズや飲食物の販売と休憩場所として使われましたが、下記写真の通りスペース的に非常に余裕があり、競技によっては体験イベントなども開催できそうです。常設店舗はありませんが、活用の幅が広いという点で、汎用性が求められる総合体育館として考えるとポイントは高いと思います。2.交通アクセス高崎に行くまでをどう捉えるかは人によって違いがあると思いますが、アリーナは新幹線も止まる高崎駅から歩いて10分程度。足を運ぶ上での大きな心理的ハードルが一つなくなることを考えると、やはりアクセスというのはこれまでにも書いてきたように大きな強みだと思います。体育館への歩道の広さが十分でないという意見もあるようですが、車社会の地方部ということを考えたらこれ以上を求めるのは酷じゃないですかね…。3.観戦環境はまずまず公営ゆえプロ野球のスタジアムのような豪華さは望めませんが、新しい施設だけあって観戦環境はまずまずだと思います。座席前の通路幅や前の席との段差、スタンドからの見やすさ、館内の明るさなどは、私は代々木体育館より良いと思いましたし、既出のエントランスは観る者のテンションを上げるのに一役買うと言って良いでしょう。固定式の堅い座席に対して厳しい意見も聞かれますが市営ですし…。ちなみにVIP用などに使われることが多いメインスタンド中央部は、折り畳み式でカップホルダーもあって座り心地も良さそうです。続いて短所です。シリーズとして「~~~の素晴らしいところ」という表題で書く以上、可能な限り良い点に着目したいですが、客観性も失いたくありませんので…。公共施設ゆえ、商業的なスポーツビジネス目線は多少トーンダウンしたいとは思いますが、可能な点は改善される期待をこめて…(1と2は簡単でないとは思いますが…)。1.昔の「ハコモノ」らしさが残る新しくモダンな施設で入場すると気分は良いですし、前記のように観戦のしやすさという点ではまずまずですが、箱物行政的な雰囲気が完全には払しょくできていない点は、残念ながら短所として挙げざるを得ないです。一般的にこうした施設が建設される際に重要性が見落とされがちなものとしては、機材の搬入口や通路、収納場所、バックヤード(舞台裏で関係者が活動する場所や部屋など)の数、大きさ、広さが十分であるか否かや、トイレや物販、観客の移動や導線に十分対応できる施設であるかといったことが挙げられます。例えば、サッカーの国際基準を満たすスタジアムには、収容人数に対して設置するトイレの数まで規定されますね。日本でしたら地震の時の避難経路などについても考慮すべきでしょう。ここ、トイレや自販機が少ないんですよね…。また、観客が一斉に退場する際の導線が十分なまでは考慮されなかったと思われる点や通路の狭さ(特にバックスタンド)、立ち見がほとんどできないコンコースの造り(メイン&バックスタンド)など…。用地活用という意味では上手く行ったのかと思いますが、線路に挟まれた工場跡地に建てられましたので、制約がある中に頑張って建てた感はどうしても残ります。こけら落としのサカナクションのライブの時はどうだったんでしょう…?外通路に仮設トイレを設けたり、退場の時は関係者通路を開放したりといった対応も可能性としてはありそうですけれど…。2.収容が十分ではないことがある車いす席、移動式席、仮設席も含めた最大収容は6,015名の施設ですが、スタンドの固定席は3,000席。今大会の高崎アリーナ開催が決まったのはリオ五輪どころか2015年の世界選手権優勝よりも前でしょうから、当時の感覚であればこのキャパでも問題ないという見通しだったのかもしれませんが、体操界としては予想以上の人気で嬉しい悲鳴なのかと想像しています(東京2020との兼ね合いもあることでしょう)。体育館が大きすぎても使い道や維持費の問題もありますし、地方都市ということを考えると目一杯のサイズとは思いますが…。ちなみに代々木第一体育館で体操の大会が開催される時は閉鎖箇所があることもありますが、スタンドだけで9,061席と、高崎アリーナの3倍です。3.アリーナ周辺の商業施設が少ないアリーナは駅の南に位置。私を含め、宿が多い駅の西側を南下する人が多いように見受けられましたが、東側を通るルートもあります。東側は西側よりは店が若干ながら多いようですが、元々工場があった場所ですし、オープン直後の施設の周りが「開(ひら)けている」ことを求めるのは酷なのかなと…。東西いずれのルート共、途中にセブン-イレブンがありますがタイミングによっては相当に混雑します。イベントの開催が増えて店舗が増えるのに期待したいですね。なお、当然ながら高崎駅周辺は十分に開けています。冒頭でも書いたように、日本の体育文化や、スポーツのすそ野を支えてきたのがこうした汎用性の高い公営施設なのは紛れもない事実です。特にプロスポーツにおいてはファンサービスが向上し、観客も今まで以上に高いレベルの観戦環境や体験を求める昨今ですが、どうしても様々な制約がある公営施設を主として使うマイナースポーツにあっても、可能なものや知恵をフル活用して、スポーツの魅力がより広く伝わることを目指したいですね。体操競技においては、今年は秋の全日本団体選手権も高崎アリーナでの開催(11/24-26)。先週末以上の盛り上がりになることを期待したいところです。追伸:他のスタジアムやアリーナに関しての記事は、下記をご参照ください(本件が14件目です)。カテゴリー「スタジアム&アリーナ」
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