体操世界選手権が終わりました。来年のリオデジャネイロ・オリンピックの予選も兼ねていたので、各国とも、現時点でのベストメンバーを揃えてきていたようです。そんな中、男子チームは団体、個人総合、種目別床、鉄棒で優勝出来たのですから、素晴らしい結果だったと思います。加藤選手が万全ではなく、なおかつ試合直前に長谷川選手が怪我をして、急遽補欠だった早坂選手に交代しました。長谷川選手と早坂選手では得意種目が全然違いますから、種目ごとの選手の起用もガラッと変わったと思います。それでも勝てる底力が、今の日本チームにはあったということです。最大のライバルの中国は、これまで団体と種目別に絞って選手強化をしていましたが、少し個人総合にも色気を出し始めたためにチーム力が落ちたんじゃないでしょうか。永年団体、種目別重視で選手を選んでいれば、おそらくジュニア世代から得意種目重点の練習をしているでしょうから、個人総合を戦える選手を育てるには相当な時間がかかるはずです。今の選手に無理をさせれば団体も種目別もコケるのは無理もない話です。しかし、リオで元の方針に戻してくれば、やはり日本にとって最強のライバルになるでしょう。個人総合では、キューバのLarduet選手、ウクライナのVerniaiev選手の活躍が印象的でしたね。二人共まだ若くて、Dスコアは内村選手を上回っていました。できる技は全部入れちゃえみたいな演技構成をやめて、8割位の技でEスコアを上げてくるようだと、来年は内村選手にとって脅威の存在になるでしょう。「たられば」の話になりますが、今回、足の怪我で個人総合を戦えなかった加藤選手が怪我をしていなかったら、どのくらいの順位になっていたでしょう。リオではLarduet選手やVerniaiev選手を蹴散らし、内村選手を脅かすくらいの活躍をして欲しいと思います。白井選手、萱選手、すごい活躍でしたね。白井選手の床は自信に満ち溢れていて、見ていて思わず笑みが浮かんでしまうような演技でした。萱選手の鞍馬は、何度も危うい場面に合いながらも最後には大成功するアクション映画のようで、手に汗を握りました。この世代は人材豊富ですから、互いに切磋琢磨してさらに強い選手になっていくのでしょう。楽しみです。田中選手は、またやっちまいましたね。お兄さんもそうでしたが、チームの事とか応援してくれる人たちのこととか、いろいろ考えすぎて「ビビる田中」になってしまうんでしょうか? チーム戦とは言っても体操は結局個人の成績の積み重ねなんですから、自分のことだけ考えるエゴイストになっていいんじゃないでしょうか。日本にとって重要な選手ですからBrand new田中になって頑張って欲しいです。女子チームはリオデジャネイロ・オリンピックの出場権を得て、決勝では5位まで順位を上げました。頑張りましたね。ただ、課題も多いような気がします。試合の直前に不調の内山選手から補欠の村上選手に交代して、その村上選手が最もポイントゲッターになり、個人総合でも最上位でした。ということは、レギュラー選手の練習がうまくいっていなかったということの現れなのかもしれません。今回は団体で5位になれましたが、このまま同じように続けて怪我→交代、不調→交代の繰り返しになってしまったら、女子は男子のように選手層が厚いわけじゃありませんから、あっという間に戦力ダウンしてしまいます。選手が「強化部の使い捨て」にならないように、上手に強くしてあげられることを願ってやみません。アメリカのBiles選手はものすごいですね。きっと、あの瞬発力と勇気がアメリカの体操にぴったりマッチしているんですね。まさに絶頂の時を迎えている感じがします。リオでは一人勝ちの独断場になるのか、あるいは新たなスターが現れるのか。ちょっとショックなのはルーマニアがチームで予選落ちっていうことです。コマネチの母国で、他にも数々の名選手がいて、何度も世界の頂点に立ったあのルーマニアが、オリンピックにチームで出られないのは寂しい限りです。Iordache選手が一人気を吐き、個人で3位になりましたが、そこをテコにぜひ復活して欲しいです。また、男子ではドイツの予選落ちもショックでした。オリンピックのチーム戦にGERの表記がないと寂しいでしょう、やっぱり。男女ともロンドンまでに強化してきたイギリスが継続して力を伸ばしているのと、ブラジルがリオに向けて強化しているのが、勢力図を変えている感があります。まあ、そのくらい世界の実力差は少なくなっているということで、日本だっていつ転落するかわからない状況なわけです。でも、できれば、私が生きている間はオリンピック参加チームにJPNの文字を消さないでいて欲しいと願っています。
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