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2013インターハイに向かって⑦ 永井直也(青森山田高校)

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2013インターハイに向かって⑦ 永井直也(青森山田高校)永井直也にとって今年は「最後のインハイ」になる。中学3年のとき、ユースチャンピオンシップで初めて見た永井の印象は強烈だった。中学生とは思えぬ、そして男子とは思えぬ表現力、しなやかさ、やわらかさを伴ったその演技は、順位以上のインパクトがあり、しっかりと記憶に焼きついた。当時、私は、男子新体操を熱心に見始めてまだキャリアは浅かったが、永井の存在をこのときに知ったのは私だけではなかった。永井が全国規模の大会に出場したのはこのときが初めてだったのだ。まさに鮮烈なデビューだったと言えるだろう。そして、そのわずか5か月後。全日本ジュニアで、永井は優勝する。前年までは、2種目で行われていた全日本ジュニアが4種目になった最初の年、半田スポーツクラブの団体メンバーも兼ねていた永井には、負担も大きかっただろうが、ユースのときより、さらに完成度を高め、魅力も増し、文句なしの優勝だった。前年のジュニアチャンピオン・臼井優華は、高校1年生ながらもその年すでにインハイ準優勝、ユース優勝と快進撃を続けていた。永井は、臼井とはまったくタイプは異なるが、ジュニアチャンピオンになった時点でのインパクトは、臼井にもひけをとらないだけのものがあった。たった1年で、知らない人はいないスター選手にかけのぼった永井直也は、青森山田高校に進学。上級生には、同じ愛知県出身の前田優樹、平野泰新(ともに現在、花園大学)などがいたが、その年は、青森がインターハイの開催地となっており、個人枠は2つあった。前田、平野、永井の3つ巴を勝ち抜いたのは、永井と平野。2人はそろって青森インハイに出場し、永井は1年生ながら、平野に次いで3位となる。優勝したのは、高校2年生になった臼井。そして、高校2年になると、永井はユースで2位、平野との激戦を制して連続出場を果たしたインターハイでは5位となる。どちらも優勝したのは臼井。このころ、すでに臼井優華は、大学生や社会人とも互角以上に戦える力をつけてきていたので、いくら永井でも、勝つことは難しかった。とくに高2のユースでの永井は、高校入学以来、最高とも言えるすばらしい演技を見せたが、それでも、臼井超えはできなかった。さらに、インターハイでは、永井の同級生である小川晃平(井原高校)が2位と永井を上回る位置につけている。そして、インターハイが終わり、秋の新人戦を前に、永井はついに青森山田の団体メンバーに入る。団体でも常に優勝を目指している青森山田だが、入学から1年4か月、永井は団体メンバーには入っていなかった。団体選手としての力のある選手がほかにもいたせいもあるだろうが、それは、「個人選手」としての永井が尊重されている所以のようにも見えた。しかし、それまで個人に専念してきた永井にとって、団体との兼任はどうなんだろう? いささかそんな不安もあった。ところが、今年の3月。高校選抜で、永井は今までとははっきり違う芯の強さが表に出た演技を見せた。高校に入って初めて、団体と個人両方での出場となった全国大会だったが、4種目すべていい出来で、臼井優華も抜けた今、当然優勝してもおかしくない演技ではあった。しかし、僅差で永井を抑え、優勝したのは小川晃平だった。中3のときの全日本ジュニアでは、永井に次いで2位だった小川は、高校生になってからじりじりと個人選手としての力も伸ばしてきており、ついに自身初の個人優勝を手に入れたのだ。その勢いのままに、続くユースチャンピオンシップでも、小川が優勝。一方、ユースでの永井は、ミスのあった種目もあり、7位に沈んでしまった。さらに、その後の東北大会では、音楽トラブルもあり、青森山田高校の後輩である佐久本歩夢に優勝をさらわれるという事態にもなってしまった。あくまで結果だけで言うならば、永井直也は、高校最後の年になって、最大のピンチを迎えている。 インターハイまで、1か月を切った。最後のインターハイを、永井直也はどんな心境で迎えるのだろう。そして、今、どんな思いでいるのだろう。しかし、私はあまり心配はしていない。窮地と言えば、窮地にいる永井だが、今、直面している試練は、おそらく彼にとって「一番必要なもの」だったのだろう、と思うからだ。団体と兼任する体力的なつらさも、負けるはずがない、または負けたくない相手に負ける経験も。演技の繊細さから、ナイーブな少年、というイメージを持ちがちだが、おそらく永井は、見た目とは違って、勝ち気で負けず嫌いだと思う。ただ、その「熱」を、ストレートに出すことがあまり得意じゃないように見えていた。臼井にしろ、小川にしろ、すばらしい選手であり、永井をもってしても勝つことは難しい相手には違いない。だが、今まで勝てなかった試合では、その「熱」の部分で、少しずつ相手のほうが上だった、ように感じることが多かった。だが、今回は。もしかしたら、永井直也こそは、誰よりも「勝ち」を熱望しているんじゃないか。そして、その「熱」は、隠しきれないほどになっているのではないか。私は、そう思っている。そう期待している、と言ってもいい。さらりと登場して、さらりを優勝をかっさらった全日本ジュニアのときと違って、山も谷もあって迎えた高3のインターハイで勝つことは、彼にとって大きな意味をもつ。だからこそ、今回こそは、永井直也の真価を見せてくれるんじゃないか。私は、そんな予感がしている。     <撮影:清水綾子>  ※ジムラブの「選手名鑑」、少しずつですが増えています。ときどき、チェックしてみてくださいね!●体操はこちら→ http://gymlove.net/gl/players/●新体操はこちら→  http://gymlove.net/rgl/players/

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